【アジャイルマガジン】スクラムマスターとしてアジャイルチームが成長し、成果を出すためにできること(体験談)
はじめに
こんにちは、MSOL Digitalの畑村です。
弊社MSOL Digitalの提供するビジネスアジャイル🄬では、アジャイルにおける様々なご支援をしています。そのひとつに「スクラムマスター代行」というご支援内容があります。こちらは、弊社からお客様の組織へスクラムマスターを提供し、お客様先のアジャイルプロジェクトチームのスクラムマスターとしてご支援を行うものです。
今回は、あるお客様先のアジャイルプロジェクトチームのスクラムマスター代行としてご支援したときの実体験を交え、私がその時に感じたチームが成長し、成果を出すためにできることをお伝えします。
チームがなかなか成果を出せていないと感じている方、スクラムマスターが現場で実際にどんなことをしているのかを知りたいという方などに向けて執筆しておりますので、少しでも参考になったと思っていただけたら幸いです。
背景・前提について
先ず、私が置かれた状況や所属したチームについて簡単にご説明します。弊社のあるお客様先のアジャイルプロジェクトチームにおいて、チームの再編成がありました。しかし、新チームでは思うようなパフォーマンスを上げることができず困っていました。
そこで、外部の助っ人(スクラムマスター代行)として、私がチームに参画することとなりました。
そのチームのメンバーは複数の会社から参画しており、一部のメンバーは他の業務やプロジェクトを掛け持ちしていました。また、働く環境もリモートで、チームのメンバーと直接会うことがなかなかできない状態でした。
チームに生じている問題
私がチームに参画後、イテレーションプランニングを行い、そこで立てた計画をもとにタスクを進めていました。しかし、日々チームの様子を見ているといくつかの問題に気づきました。
1.タスクが特定の個人に依存している
チーム内には、チームの再編前から参画している既存のメンバー(Aさん)がいたのですが、Aさんはプロジェクトの情報やチームが過去にしていた業務を一番よく知っていました。そのため、Aさんが比較的多くのタスクを引き受ける事態に陥っていました。
2.メンバーの知識・情報が不足している
Aさんを除き、他のメンバーは新規参画となるので、タスクを進めるための知識やプロジェクトの情報をキャッチアップする必要がありました。しかし、目の前のタスクに追われていたり、別業務を抱えていたりするため、キャッチアップの時間が思うように取られていませんでした。
3.メンバー間のコミュニケーションが不足している
他の業務やプロジェクトを掛け持ちしているメンバーにおいては、プロジェクトに割けられる工数が異なります。人によってこちらのプロジェクトの方が優先順位、参画比率が低いこともあり、一同に会して頻繁にコミュニケーションを取ることが難しい状況となっていました。
このような問題はいずれも、チームとして仕事をすることを困難にし、タスクの停滞やチームの成長を阻害します。そして、最も重要な「顧客への価値提供」ができず事態を更に悪化させてしまいます。
問題への対応
この問題をなんとかしたいと考えた私は、以下の対応をとることにしました。
1.チーム全員で問題を共有する
先ずはイテレーションの振り返りで、チーム全員に対して問題に感じていることを伝え、この問題についてどう思っているかを尋ねました。すると各メンバーから「このままではいけないことは分かっている」、「なんとかしたいと思っているけど、そこまで手が回らなくて…」といった声が挙がりました。これをきっかけにメンバー同士で話し合った結果、「問題を放置せず少しでも改善していこう」とチーム全員で合意することができました。
2.チームのあるべき姿を設定する
問題の共有に加え、このチームのあるべき姿も考えてもらうことにしました。こちらもメンバー同士の話し合いの結果、チームのあるべき姿を「特定の個人に依存することなく、チームで仕事が進められるようになること。メンバーのフルスタック化。」と設定しました。
これを考えてもらったねらいは、あるべき姿(問題が改善した後のチームの状態)を設定することで、チーム全員が同じイメージを共有し、目指すベクトルがズレないようしたいという思いからでした。
3.具体的な改善アクションをとる
問題改善のためにとった実際のアクションをいくつかご紹介します。
ⅰ.情報の可視化と共有
タスクが個人に依存せずメンバーがフルスタックに動くためには、メンバー全員がそのタスクについて理解していることが必要なため、先ずは情報を可視化することをしました。
例えば、スプリントバックログ内のタスクを進めるには、具体的に何から手をつけるのか、一部のメンバーの頭の中にしかない情報をプロジェクト管理ツール上のタスクチケットに書き起こしてもらいました。他にも、不明点を解消するために分からないと思ったら、すぐに書き残せるエリア(パーキングロット)をチームのホワイトボードツール上に作成しました。
そして、情報は可視化するだけでなく、メンバーと共有(情報の送り手と受け手が同じ認識を持った状態に)しなければ意味がありません。
後で確認しようとパーキングロットに書き残したもの、進捗状況を書いたタスクチケットなど、可視化した情報もデイリーミーティングの時間やチャットを使って、他のメンバーに共有することで伝達漏れを防ぐようにします。
ⅱ.タスクに集中する(一人当たりにかかるタスクの負荷量を分散させる)
アジャイルでは当たり前の手法だと思いますが、ペアワーク・モブワークも活用しました。一人でできなければ複数人で取り組み、早く片付けてしまいます。
ポイントは、メンバーが集まれる時間を決めて、その時間内でやりきることを意識することです。そのためには、タスクに取り組む前に、この時間にやること、ゴール、作業の時間配分も決めます。タイムキーパー役を決めて途中経過を共有するのもいいでしょう。また、終了時間前には簡単な振り返りを行い、達成できなかったとしても、時間内で終われるような別の進め方を全員で話し合い、次の集まる時間を確認します。
ここで述べた対応は、日々アジャイルプロジェクトに携わる方々にとっては当たり前に映るかもれませんが、「今できていない当たり前からはじめる」ことが問題解決の近道ではないかと感じました。
チームの変化・成果
上記の改善に向けた対応を続けたことで、チームに以下の変化が表れました。
1.タスクが個人依存にならずチームで分担できるようになった
やるべきタスクの情報が明確になったことで、誰でもタスクに着手できる状態となり、特定の個人にタスクが偏ることがかなり少なくなりました。
2.メンバーの知識やタスク・プロジェクトへの理解が向上した
分からないことを分からないままにしておかない、小まめに解消していったことで、メンバー同士が持つ知識や情報の理解の差が埋まっていきました。
3.チーム内のコミュニケーション時間が増えた
情報の共有や一緒に作業をする時間を取ったことで、メンバー間で自然とコミュケーションが取られ、雑談など気軽な会話も増えました。それにより、各メンバーの発言が増え、より建設的な議論で行えるようになりました。
このようなチームの変化に加え、タスクをこなせる総量が増えたことで、設定したイテレーションゴール(顧客へ期待通りの価値を提供すること)が達成できるまでに至りました。
まとめ
私が今回の経験を通じて学んだことは、チームが様々な問題を抱えていたとしても、チームで話し合い、できることを模索して、実行に移すことが重要だということです。
特に「当たり前」、「よく言われている手法」がそもそもできていないのであれば、その実現に少しでも近づくには何ができるか、という視点を持つことで、問題の解決の糸口になることもあります。
そして、小さなできることの積み重ねがチームの成功体験を生み出し、チームの成長となり、それが顧客への価値提供の実現に繋がるのだと思います。
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